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2008年7月24日 (木)

ソ連映画と漁獲高

ブログをなかなか更新できない。アップしたい話題をメモったり、 関連記事をスクラップしたりしているのですが肝心のアップを果たすことが出来ない。

最近しばしば、「日本語字幕付きのロシア映画で新しい作品はないの?」という質問を受けるのです。 日本とロシア映画の背景をちょっぴり説明してみます。そこで表題の「ソ連映画と漁獲高」と言うことになります。 旧ソ連時代には社会主義を啓蒙宣伝する、つまりプロパガンダの有力な手段として映画は位置づけられていました。国営モスフィルム (共産時代だから全て国営なのだが、今は民間会社)が一手に制作を担当し、海外向けの配給を担当していたのがRSCICOでした。

旧共産政権時代には「日ソ漁業交渉」と言う、毎年恒例の会議がありました。日本漁船によるソ連海域での操業でサケ・ マスの漁獲高を割り当ててもらう交渉でした。これが決まらないと、日本側の船団は出漁出来なくて、 交渉の決着を見るまで港に待機していたのです。戦後数多のソ連映画が輸入され、 ソ連映画という物が日本人の間によく知られることになったのは、実にこの「日ソ漁業交渉」の賜でした。漁獲高割り当ての反対給付の一端が、 実はソ連映画のパッケージでした。そのために日本側には半国策会社として、数社の輸入配給会社が用意されていました。 こうしてソ連時代に日本に輸入された映画は膨大な数に上ります。

ソ連崩壊とともにこの仕組みもまた機能しなくなり、嘗ての半国策輸入配給会社もみな解散されました。純商業ベースとなってみれば、 日本ではロシア映画に対する需要が低く採算に乗らないと言うところでしょうか。 ちょっと驚きますがソ連崩壊後に日本に輸入されたロシア映画は、なんとわずか数本でしかありません。つまり日本語字幕付きのロシア映画とは、 これみなソ連時代の産物と言っても過言ではありません。

ロシア本国での事情も有りました。一大帝国であったモスフィルムも民営化を余儀なくされ、 一時ロシア映画界の衰退は憂慮すべき深刻な状況でした。かつてのモスフィルムの一部門であった、 RUSCICOは海外向けに販売できる映像資産が有りました。この資産の所有をめぐり争いが起こり、 現在ではモスフィルムとRUSCICOは断絶状態。モスフィルム側は、RUSCICOが持つと主張している映像権を一切認めていません。 勿論崩壊後制作された映画の、海外への配給権等一切取り扱いさせていません。RUSCICOでも近作、 新作を多国語化して販売したいのでしょうが、これが全くだめ、出来ません。

そういうわけで実は、ロシアではソ連時代の映画の版権がいまだに宙に浮いています。法的に争っているわけでもなく、 裁定がどこかで下されるでもなく不思議な状態です。どちらにしてもどさくさに紛れて、 国有財産を私的に所有してしまったと言うことでしょうか、お互いにたたけばホコリが出る状況では有るわけです。 この辺のところは我々日本人にはうかがい知れるところでは無く、極めてロシア的なところかもしれません。かつてブッシュ大統領が、 知的権利の保護をめぐりロシアを非難した際に、「ロシアにはロシアの伝統と固有の文化が有る、アメリカがとやかく言うことではない」 とプーチンは一蹴しましたが、この辺のところもロシア的な思考の一端でしょうか。

 

 

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